意外と知らない、眼鏡やレンズの正しい知識を得ることは、ご自身の目や視力をいたわることに役立ちます。健康で快適な視生活を送るための参考にしてみてください。
「眼鏡とレンズのお話」では、様々な眼鏡レンズの事についてご案内させていただきましたが、今回は少し趣向を変えて、調節力(ちょうせつりょく)についてお話いたします。
1.調節力とは?
「眼鏡とレンズのお話Vol.5-スマホ老眼について-」の中で少しご説明していますが、人の眼にはものを見る際に、対象物の距離に合わせてピントを調整する機能があります。そのピントを合わせるために使う力の事を調節力と言います。
調節力は、正視(遠視でも近視でもない)の眼で、5m以上先のものを見る際にはほとんど使われることは無く、5m以内のものを見る際に使われます。対象物までの距離が近いほど、多くの調節力が必要です。 今回のお話でも調節「力」と表現していますが、その「力」とは具体的にどういった事なのでしょうか。
1-2調節力とは‐少し詳しい解説‐
近くにある対象物を見る際に、眼の中ではこんなことが起きています。(実は諸説ありますが、一般的な見解です)
①毛様体筋(もうようたいきん)と呼ばれる、水晶体を360度ぐるっと1周支えている筋肉が緊張・収縮(力が入る)する。
②毛様体筋の緊張・収縮で、水晶体に圧力が掛かり、水晶体に厚みが出る。
③水晶体の厚みが出ることで、虫眼鏡(凸レンズ)の作用が多くなり、対象物にピントが合う。
このように水晶体を支える筋肉に加わる力の事を「調節力」と呼びます。筋肉と言うと鍛えれば強くなると言うイメージがあるかも知れませんが、調節力は年齢とともに低下していき、増やすことは出来ません。
調節力が低下してくと、近く(手元)の対象物にピントを合わせづらくなり、徐々に眼から対象物までの距離が離れていきます。
調節力はその他の筋肉と同じで、使用頻度が多くなると疲労してしまいます。疲労が溜まると調節力が低下していきますので、スマホやパソコン操作などの近距離作業を長時間していると徐々にピントが合わせづらくなってきます。疲労具合には個人差がありますが、無理せず適度に休憩を取りながら行うようにしましょう。
2.調節力と屈折異常
2-1.調節力と老視
「眼鏡とレンズのお話 Vol.2 屈折異常とは」の中で、老視について説明していますが、加齢による水晶体の硬化と調節力の低下が主な原因です。 水晶体の硬化と調節力の低下により近く(手元)からの光が網膜の後方で焦点を結ぶので、ルーペやリーディンググラス(両方とも凸レンズ)を使って網膜上に焦点を結ぶためのサポートをする必要が出てきます。
2-2.調節力と遠視
屈折異常の中で遠視の眼は、遠くから来た光が網膜の後方で焦点を結んでいます。 遠視の方で、眼鏡を掛けていない場合、網膜の後方にある焦点を網膜まで移動させるために調節力を使っています。ですので、遠視の方は常に調節力を使ってものを見ている為に疲れやすいと言えます。
年齢を重ねるにつれて、遠視の方は近くだけでなく遠くも見づらくなる事もあります。これも調節力が低下してしまい、遠くを見る際にも網膜上に焦点を移動させられなくなってしまうからです。
2-3.調節力と近視
屈折異常の中で近視の眼は、遠くから来た光が網膜の前方で焦点を結んでいます。 近視の方は、眼鏡を掛けていない場合、近く(手元)を見る際には調節力をほとんど使わない状態です。(近視の度合いにもよります)
ですが、眼鏡やコンタクトレンズで視力矯正をして遠くが見えている場合では、近くを見る際に調節力を使わないと網膜上に焦点を移動させることが出来ません。
更に、眼鏡やコンタクトレンズの度数が眼にとって強すぎる状態「過矯正-かきょうせい-」になっていると、遠視の方と同じように普段からものを見る際に調節力を使わなくてはいけない状態になっているので、疲れやすくなってしまいます。
「スマホ老眼」と言われるように、若い方でも調節力の酷使による眼精疲労や視力の低下、更には作業効率の低下などが起こってしまいますので、使用用途に合わせた適正なレンズの度数を眼科さんや眼鏡店のスタッフと相談していただく事をお勧めします。
3.調節力と眼鏡レンズ
加齢による調節力の低下によって手元にピントを合わせづらくなった時、それをサポートするのがリーディンググラスと呼ばれる単焦点レンズや遠近・中近・近近両用などの累進レンズです。Vol.4、5、6、7参照。
どのレンズでご利用いただくとしても、使用用途に合わせた適切な度数で作ることが大切です。店頭で実際に体験していただくのはもちろん、ご使用になる状況や対象物までの距離などを眼科さんや眼鏡店のスタッフにご相談いただき、ご要望をお伝えください。より良い眼鏡を作る為には情報が多いに越したことはありません。現在使用している眼鏡のご不具合なども伺えると更に精度が上がりますので、ご持参いただく事をお勧めします。
4.眼の健康を考えて
調節力の酷使による眼精疲労になってしまった場合、眼を使わずに休めることが一番です。 昔から「眼が疲れたら遠くの景色を見ると良い」と言われていますが、この遠くを見ると言う行為は、調節力を使わずに見ている状態=眼の力が抜けてリラックスしている状態なので、とても理に適っています。
遠くを見る際は、何か一点を見るのではなく出来るだけ力を抜いてぼぉっとするのが良いですね。眼をつぶってしまうのもありです。
目元のマッサージや、温めも効果があると言えます。
一日の最後に、頑張った眼の筋肉を労わってあげましょう。お仕事中の空いた時間に、眼に手を当てて温めるだけでも効果はあります。
当店では専門の知識を持ったスタッフが、お客様一人ひとりの状況を丁寧に伺い、最適なメガネフレームやレンズのご提案を致します。最近眼が疲れると言ったお悩みも多く伺いますので、お気兼ねなくご相談ください。